重度の肉離れ治し方「スポーツ競技で全力疾走したい」

監修:中村考宏

柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師。2020年三重県桑名市多度町にえにし治療院を開院。著書「骨盤おこし」で体が目覚める(春秋社)、趾でカラダが変わる(日貿出版社)、他多数。メディア「anan」「クロワッサン」「Tarzan」などで「骨盤おこし」「足指」を紹介。NHKテレビでコロナ禍の運動不足解消エクササイズを紹介。プロフィール詳細ユーチューブアメーバブログ

肉離れの程度

スポーツをしていると怪我をすることがあります。いつの間にか気にならなくなっている怪我から、医療機関で治療を継続していてもなかなか治らない怪我まで、その程度は様々です。当院に来院される方の中にも、年中故障を繰り返しているという方も少なくありません。競技をされている方で、これまでに10回以上肉離れを繰り返していて、全力疾走が怖くてできない、という方もいます。


▲解剖学アトラス 訳=越智淳三

一般的な肉離れの原因と治療

一般的に、肉離れの原因は、急に動作をしたとき、蹴り出して走る人に多い、と言われています。そして、筋肉は伸張性収縮のときにちぎれることが多いといわれています。また、肉離れをする箇所は、ハムストリングス、ふくらはぎ、などの筋肉の筋腱移行部で多発します。肉離れの治療は、怪我をしたばかりの時期、RICE(ライス)「安静、冷却、圧迫、拳上」が原則です。その後、様子をみて、ストレッチ、負荷をかけるリハビリが一般的です。これらの治療で治る場合は、怪我の程度が軽度だと考えられます。しかし、10回以上肉離れの再発を繰り返している場合は、治療方法を考え直さなければなりません。

伸張反射が動作で発動しない状態

このような重度の肉離れの原因について、私の経験では、「伸張反射が動作で発動しない状態」だと考えています。伸張反射は筋肉が伸張して収縮するゴムの性質のような反射です。スポーツ競技の動作では、特に跳躍をするときに必要な反射です。一方で、筋肉が伸張し、めいっぱい筋肉が伸びるとちぎれてしまいますから、生体防御的な反射として収縮する、という見方もできます。

 

伸張反射で働く筋肉は、

    下肢

  • 大腰筋
  • 大臀筋
  • 大腿四頭筋
  • ハムストリングス
  • 下腿三頭筋

などがあります。
そして、伸張反射を発動させるのに、伸張してはいけない筋肉があります。それは、

    下腿

  • 前脛骨筋
  • 長母趾屈筋
  • 長趾屈筋

です。これらの筋肉は伸張反射の土台となる筋肉です。

肉離れを発症するタイミング

正常な筋肉は「収縮-伸張-収縮-伸張−収縮」で働きます。このように筋肉が働いていれば何の問題もありません。しかし、肉離れをする場合は、伸張のタイミングで収縮が重なって伸張反射が起こらず、筋肉が、ちぎれてしまうのだと考えています。ですから、急な動作で肉離れが多いのですが、筋肉が正常に働いていれば、本来何の問題もないはずです。その場合は、筋肉が正常に働いておらず、伸張反射が動作で発動しない状態だと考えます。また、蹴り出す走り方は、筋肉が伸張性収縮で働きますので、肉離れを起こしやすいのだと考えられます。

ストレッチの副作用

筋肉が正常に働かない原因について、私はストレッチの副作用だと考えています。筋肉は「伸張-収縮」で働くのが正常ですが、ストレッチの伸張の入力が協調され続けることで、筋肉の正常なリズムが崩れ、故障につながる恐れがあります。また、関節の連動に問題がある場合も筋肉が正常に働きません。例えば足関節と膝関節の関節の運動方向が、そろっていないと、筋肉の起始停止部がそれてしまいますから、肉離れに限らず、故障につながります。

ふくらはぎとハムストリングスの使いどころ

ふくらはぎは下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋)といって膝の上から踵のアキレス腱に付着する筋肉です。作用は、足関節の底屈、膝関節の屈曲です。ハムストリングス(大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋)は、骨盤の坐骨結節から膝の下の脛の骨に付着する筋肉です。作用は、股関節の伸展、膝関節の屈曲です。これらの筋肉の作用の仕方は、
肉離れを繰り返している場合ですと、

  • ふくらはぎ:足関節の底屈
  • ハムストリングス:膝関節の屈曲

に働いていて伸張反射が動作で発動しません。
正常な場合ですと、

  • ふくらはぎ:膝関節屈曲
  • ハムストリングス:股関節伸展

に働いて伸張反射が動作で発動しますので何の問題もありません。

リハビリ方法

リハビリは、伸張反射が動作で発動する状態にすることが必要です。まずは、伸張反射の土台作りが欠かせません。牧神の蹄を使って足の感覚を回復し、足指トレーニングで、

  • 前脛骨筋
  • 長母趾屈筋
  • 長趾屈筋

を動作で収縮できるようにします。そして、

  • ふくらはぎ:膝関節屈曲
  • ハムストリングス:股関節伸展

伸張反射が動作で発動できるようにしていくことが必要です

まとめ

まとめると、蹴り出す動作は怪我のリスクがあります。もし、ストレッチが必要な場合は、専門の医療機関の指示のもとでおこなうこと。私はこれらの危険性を秘めているため、ストレッチをすすめていません。故障している方が全力疾走できるよう願っております。

「肉離れ」治療のサポートをご希望の方

当院では、体の不調や障害を改善する治療や、健康増進、パフォーマンス向上のための施術を行っています。一人一人に最適なサポートを心がけておりますので、症状や気になることがあれば、どうぞお気軽にお知らせください。遠方からの来院者や集中的なケアを希望される方のために、個別指導やパーソナルトレーニング、股関節覚醒コースも用意しています。小学生からシニア、アマチュアからプロのスポーツ選手まで幅広くサポートしております。再発防止、健康増進、パフォーマンス向上のトレーニングもご希望に応じて指導しています。トレーニング内容は、個々の体の状態に合わせてカスタマイズしております。どうぞよろしくお願いします。

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