治療の考え方

えにし治療院は、運動療法と徒手療法をもちい、「体の機能回復」をめざしています。

心身の不調が起こる原因とメカニズムは複雑です。当院では、さまざまな心身の不調の元にある、体の機能状態に着目しました。その体の機能を良好にすることにより、心身の不調に対して速やかに対処できる、すなわちそれによって、回復力を高めることができ、体のつながりを取り戻せると考えています。

怪我や病気は、そのときの体の状態では、そのとき生じていたストレス(ハードワーク、負荷や衝撃の大きさ)に耐えられなかったために現れた、一種の結果です。結果が現われるということは、それに対応する原因が、まずあったはずです。その原因に目を向けなければ、何をしてももとの木阿弥でしょう。それは、ただがんばればいい、工夫すれば乗り越えられる、という類のものではありません。

病気や怪我をする前の体の状態が機能的にどのような状態であったかわかりませんが、ストレスに対処できるほどの体の機能を、そのときは持ち合わせていなかったということは確かです。ですから、「本来あるべき体の状態」を目指すことが、再発しない本当の完治だと当院では考えています。

「本来あるべき体の状態」に回復するには、治療を通じて、深部感覚を目覚めさせ、自己を実感できる骨格ポジションを作る必要があります。そして、自分の体を所有し、自分の体をコントロールできるようにしていくのです。

*深部感覚とは「固有感覚(proprioception)」、自分の身体を所有する感覚、つまり、自分を感じる感覚です。この感覚を発見したのはイギリスの生理学者であるサー・チャールズ・シェリントン(1857-1952)です。深部感覚というのは、目を閉じた状態でも手足の位置や曲がりぐあい、その動きを感じることができる感覚です。皮下、筋肉、腱、筋膜、骨膜、関節などに受容器があります。受容器(固有感感覚受容器 proprioceptor)とは、身体の内部の刺激を感知する細胞や器官のことで、筋紡錘、腱紡錘、ルフィニ小体、パチニ小体などがあります。深部感覚には、主に「位置覚」、「運動覚」、「重量覚」などがあります。私たちは、目を閉じていても四肢や体幹の各部位の位置関係がわかる位置覚、関節の動きがわかる運動覚、物をもってその重さがわかる重量覚のおかげで自分の身体を所有することができるのです。私たちは、身体の内部の刺激を受け取り(受容器)、その刺激の情報を中枢で処理・統合したり、脳の情報を筋肉に伝えたりして知覚するこよができます。これに加えて、皮膚が関節の動きにつられて伸びたり、縮んだりすることによって、皮下にある受容器が働きます。つまり、深部感覚は、自らが動くことによって生じる、身体の内部の刺激を感じ取る感覚なのです。

しかし、深部感覚は体の位置、緊張、動きを無意識のうちに自動的に調節する感覚ですから、そもそもが意識されない感覚の流れであり、意識にのぼらない感覚ともいえます。実際、怪我や病気によって深部感覚を失ってみて「深部感覚の存在」を実感できる感覚です。確かなことは、「この感覚は、自らが動くことによって生じる体の内部の刺激を感じ取ることでしか目覚めない」ということです。ですから、当院の運動療法は、患者さんに主になっていただき、体の機能低下が著しく、どうにも自分では手におえない方のサポートとして徒手療法をもちいています。